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ヨナ（8）は遂に、外でお日様が照っているのを見ました。数週間休みなく雨が降り続いた後で、ようやく新しいキックボードを物置から出すことができました。誕生日のプレゼントでもらった新しいおもちゃをやっと試すことができます。残念ながら、ある思いがけない出来事が彼を待ち受けてはいましたが。
この小さな命知らずはヘルメットをかぶり、真新しいキックボードに乗りました。家の前の歩道はキックボードで遊ぶのにピッタリでした。平らな敷石が続くその道を、キックボードのタイヤが滑らかに走りました。すべてがとても上手くいっていました。突然、誰かの叫び声が聞こえてくるまでは。
ヨナの近所に住むエイミーは、ジョナサンが遊んでいるのを見るとおかしな目つきをしながら外に出てきました。そして道の角に立ち、じっとヨナを見ていました。そして突然、「ヨナ、止まって！」と叫びました。彼女の怒鳴り声を聞いたヨナは、キックボードから転げ落ちそうになりました。エイミーはせわしない様子でヨナの方に歩いて来ました。彼女が次にしたことを、ヨナは生涯忘れないでしょう・・・
それは、かなり奇妙な状況でした。ヨナには誰かが怒鳴っている声が聞こえましたが、はじめは誰の声かわかりませんでした。この小さな命知らずは、できるだけスピードを出そうとすっかり集中していたのです。でも誰かが怒鳴るのが聞こえてバランスを崩し、かろうじて足で体を支えました。
ヨナは、声がした右の方に目を向けました。すると、お隣のエイミーがこちらに向かって来るのが見えました。ヨナは、自分が見ているものを確かめようと、目をこすりました。そうです、彼女が確かにこちらに向かって歩いています。
真剣な目つきのエイミーが、ヨナに向かって真っ直ぐに歩いて来ます・・・
ヨナにとってはおかしな状況でした。転びそうになったからではなく、隣人のエイミーのことをほとんど知らなかったからです。実際、今まで2人が直接話したことはありませんでした。エイミーが自分の父親であるテオと話しているのを時々見かける程度です。そこにヨナが近づいても、エイミーは彼に目を向けさえしませんでした。
ヨナの父親はいつも、エイミーのことを「変わった女の人」と呼んでいました。「気にするな、あの人はちょっと変わってるから」と、エイミーを見かける度にパパは言いました。どうして彼女が変わっているのか、テオにはわかりませんでした。
でも今日、ヨナはその理由を知ることになります・・・
エイミーがこちらに向かってくるのを見たヨナは、少し後ずさりしました。何だかちょっと怖くなったのです。父親はスーパーマーケットに行って家にいませんでした。自分ひとりの時に、エイミーに何かされたらどうしよう。ヨナは、父親が早く帰ってきてくれて、そう長い時間自分とエイミーだけでいなくてもいいようにと願いました。
「ヨナ」、とその隣人が怒鳴りました。あと数メートルで彼のところです。ヨナにはエイミーが怒っているように見えました。
ヨナは身構えました・・・
エイミーがヨナの前にやってきました。2人は正面から見つめ合いました。とても妙な対面でしたが、隣人の緊迫した表情がゆっくりとためらいがちな微笑みに変わってゆきました。そして、「もう一回キックボードで行ったり来たりしてくれないかしら？」とヨナに尋ねました。「お願い、ちょっと気づいたことがあるの！」
少年にはわけがわかりませんでしたが、相手の発言が思ったより普通だったのでホッとしました。もっと変なことを言われるかと思ったのです。そこでヨナはキックボードを起こし、庭の前のコンクリートの上を行ったり来たりしました。
エイミーはそれをじっと見ていました・・・
ヨナが2往復したところで、エイミーが「もういいわ、止まって！」と言いました。ニコニコ顔の口元がさらにほころびました。「やっぱりね！」と、青い靴を履いたその隣人は、コンクリートの上で小躍りを始めました。
彼女が何を見ていたのか、ヨナにはわかりませんでした。ヨナの父親が言ったことはまったく正解でした。何て変な人なんでしょう。でも、必ずしもエイミーの態度がおかしいわけではなかったことを、ヨナが知らなかっただけなのです。エイミーは、皆の生活をすっかり変えてしまう、あることを発見したのです。
「お父さんはどこ？！」とエイミーはヨナに尋ねました。「今すぐにお父さんと話さなくては！」
「パパはまだ帰ってないんです」とヨナは答えました。エイミーはじれて落ち着かないようでした。「テオが帰ってきたらすぐに電話してくれない？本当に大事なことなのよ！」
エイミーは踵を返すと家に駆け戻って行きました。ヨナは困惑しながらその後ろ姿を見送りました。何が起こったのかさっぱりわかりません。彼の父親に何を言うつもりなのでしょう？「何も悪いことはしてないよね？！」と、キックボードをガレージに戻しながらヨナは考えました。
ヨナは居間に座って父親の帰りを待ちました。表に車が駐まる音が聞こえると、ヨナは走って父親を出迎えました・・・
「パパ、パパ！キックボードに乗っていたら、あの変なお隣の人が出てきたんだ。僕にキックボードで行ったり来たりしてって頼んで、それを見ながら急にちょっと踊り出したよ。それに、パパが帰ってきたらお話したいって言ってた。」
テオは耳を疑いました。でも、「とうとうその時がきたか」と、静かに言いました。
「何のこと？」とヨナは父親に尋ねました。それには答えず、父親は外に出ると後ろ手にドアを閉めました。そして隣家に行ったまま、1時間以上も帰って来ませんでした。リビングの窓越しに、2人が大声で話しているのがヨナには聞こえましたが、一体何の話をしているのかはわかりませんでした。
1時間半ほど経って、父親とあの変わった隣人が家に入って来ました。2人はソファに座ると、ヨナにも腰掛けるように言いました・・・
「パパ、何？お隣さんがどうしてここにいるの？どうして僕をジロジロ見ているの？」
ヨナの父親は、深いため息をつくと口を開きました。
「この人はただのお隣さんじゃないんだ。お前を産んだ代理母なんだよ。お前も知っているとおり、パパはずっと独りで生きてきたけど、子どもだけは欲しかった。でも十分な年齢になるまで待っていたんだ。それで、このお隣さんが僕を助けてくれることになった。お前は9か月間この人のお腹の中にいたんだよ。お前が産まれた時、お前が適当な年齢になるまでこれを小さな秘密にしておいてくれって頼んだんだ。でも、その時が来たようだ。
お前の人生にこの人を加えなかったのは僕の身勝手だった。この人は一種の母親みたいなものだからね。君のことをもっと知りたがっていたし、僕もそれはわかっていたよ。お前はどう思う？」
ヨナはソファから立ち上がると、今までまったくの他人だったその女性をじっと見つめました。始めは固い顔でしたが、やがてニッコリと笑いました。その隣人の、エイミーと同じ笑顔でした。
「まあ、私たちの笑い顔ってそっくりね」と、少年を抱き締めながらエイミーが言いました。それ以来、ヨナは毎日この隣人と遊んで過ごしています。エイミーとテオは再びよい友人同士になり、ヨナには友だち兼母親代わりができました。
彼女はもう、隣に住む変わった人ではありません。エイミーです。テオを産んでくれたヒロインなのです。
